スポンサーサイト

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    • 2016.04.04 Monday
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

    0


       

      9

       


       あー、やばい、やばい。ぼくの頭の中を、あの赤いランドセル

      を背負った「あっちゃん」が行き来している。それも、数十年ぶ

      りに今目の前に来ようとしているのだ。心臓がバクバクする。息

      苦しい。


       玄関では、母とあっちゃんが何やらやり取りをしている。


       「悪いなぁ、お土産なんて。そんな気つこうたらあかんで。」


      母の元気な声だけが聞こえる。


       「おーい、なおくん!あっちゃんやでぇ。」


      なんで勝手に呼ぶんだ。こっちの気も考えろよ。


       「なおーっ、あっちゃん、待ってるで!」


      なんで待つんだよ〜、父は全く知らん顔でいる。もうだめだ。ぼ

      くは、立ち上がった。おっとと、少し左によろめいた。いわゆ

      る、足が地に付かないという状況だろうか。一歩一歩、月面を歩

      く飛行士のような足取りになった。やっとのことで土間まで出る

      と、今度は母と鉢合わせだ。


       「何してんの?まってるでぇ。」


      ぼくは、黙って(ああ・・・)という顔をした。


       「家まで送ってたりーい。」


      また勝手なことを言っている。僕の意思というものはどこにある

      んだ。そうこうしながらも玄関まで出ると、外で向こうをむいて

      る長い黒髪の女性がいる。それもどこかで見た後ろ姿だ。つい最

      近、いや、ついさっき。


       「あ、あの。」


      ぼくは、そっと声をかけた。振り向いた彼女は、あの行きの電車

      であった子だ。


       「こんにちは。」


      向こうはやけに落ち着いている。


       「さ、さっき、会ったね。」


      自分でも落ち着きのないのがわかる。靴さえも普通に履けない。


       「クククッ。」


      あの時と同じ笑いだ。


       「今日、名古屋まで行ってきたの。」


       「そ、そうなんだ。」


      落ち着け、落ち着け。心に言い聞かせた。

       


       やっとの思いで玄関を出た。風が冷たい。もう日も落ちかけて

      る。


       「あたし、帰るね。」


      いきなりの彼女の言葉に、またも頭が白くなりかけたが、ここは

      理性が勝った。


       「家まで送るよ。」


      彼女が、にっこり笑った。実にかわいい。


       「あたしの家、覚えてる?」


      おっと、笑顔とは裏腹のツッコミ。まずいぞ、自信がない。


       「ああ、覚えてるさ。」


      心とは違い、口が動いている。


       「じぁあ、行こっつ。」


      彼女が先に歩き出した。ここは、男だ。ぼくも彼女の横に並ん
      だ。


       


       実家の前から少し下りの道を行くと、車道に出る。
      2人で並ん

      で歩くと、やけに道が狭い。(この道、こんな狭かったっけ?)

      心がつぶやいた。しかし、よく考えれば、この道を並んで歩くの

      も小学校の低学年、いや、幼稚園の頃以来かもしれない。道が狭

      くなったのではない。体が大きくなったのだ。当たり前の思考回

      路に言葉が出ない。


       「この道、三輪車で降りたの覚えてる?」


      彼女が声をかけてくれた。不思議だ。なぜか、気持ちがほぐれ

      る。


       「ああ、覚えてるよ。」


       「なおくん、途中からそこの畑に突っ込んだよね?」


      やっぱり、余計なことまで覚えている。


       「ああ、そうだったよね。」


       「泣いたよね?」


      さあ、来たぞ。ぼくをどうしようとするつもりだ。


       

                            (つづく)     

       ランキング 応援お願いします!

            
      人気ブログランキングへ
      にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                              にほんブログ村


      スポンサーサイト

      0
        • 2016.04.04 Monday
        • -
        • 14:52
        • -
        • -
        • by スポンサードリンク

        コメント
        あらら、初恋だったの? あっちゃんは。
        いいわねぇ、こういうドキドキワクワク感。
        • 太郎ママ
        • 2013/03/23 8:32 AM
        太郎ママさん コメントありがとうございます♪

        そうですね〜 あっちゃんは「初恋の人」だったんですね☆
        行動の一つ一つが、
        手に取るように伝わって来ます。
        応援してあげたくなる気持ちと、
        動揺ぶりの滑稽さが交差します。
        早くこの先を読みたいですねぇ。
        • 夏雪草
        • 2013/03/25 6:12 AM
        夏雪草さん コメントありがとうございます♪

        気持ちが伝わって嬉しいです!
        次回をご期待下さい☆
        コメントする








           
        この記事のトラックバックURL
        トラックバック

        PR

        calendar

        S M T W T F S
           1234
        567891011
        12131415161718
        19202122232425
        262728293031 
        << March 2017 >>

        ローカルテキスト

         

        見つけよう!Amazon

        ドリームポケット

        ゴールデンアイ

        レインボーマップ

        recent comment

        recent trackback

        profile

        search this site.

        mobile

        qrcode

        powered

        無料ブログ作成サービス JUGEM