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    • 2016.04.04 Monday
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    『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

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      16



       ボクの目の前にいる彼女には、何か懐かしさを感じる。それは、幼い

      頃に置き忘れたままで思い出せない思い出のような気がした。ボクの

      気持ちは、妙に落ち着いている。


       「君を描くよ。ありのままの君を。」


      思いもかけない言葉を発している。彼女は嬉しそうである。イーゼルの

      前に椅子を持ってくると、彼女は腰掛けた。ボクは改めて、彼女の姿を

      見直した。リラックスした自然体の彼女からは、オーラのようなものが

      感じられた。そして、自分の絵描きとしての第一歩を思い出した。




       中学の頃は、毎日毎日、デッサンに明け暮れた。得意としていたの

      は「人物画」である。校内では、美術部の小森として知らないものは居

      なかった。しかし、根っから寡黙な自分には、友達と言える仲間もいな

      かった。根暗で運動神経の鈍い自分は、劣等感の塊だった。そんな自

      分を唯一、救ってくれたのが美術の時間であり、文化祭だった。




       不思議だった。普段、こんな頃のことは思い出しもしなかった。


      (そうだぁ!あれは確か、1年生の文化祭だった。)


       ボクの書いた何枚かの絵の中に、「ひとりの少女」の絵があった。こ

      の絵のモデルが誰かということで、校内の話題となってしまったことが

      あった。文化祭が終わった数日後、
      3年生の教室の黒板に相合傘が書

      かれた。そこには、「小森直也、池西淳代」と書かれていた。ボクは、

      必死になって3階まで駆け上がると無我夢中で、その落書きを消した。

      教室にいた先輩たちは、ボクのことを笑った。でもそんなことは、どうで

      もよかった。ただ、ただ彼女に申し訳なかった。彼女を書いたつもりで

      はなかったのに、校内中の噂になってしまった。だだえさえ、中学に上

      がってからは、お互いに変に意識して口も効かなくなっていたのに、こ

      の有様だ。決定的だった。




      (あっちゃん、ごめん!)心で何度つぶやいたかわからなかった。




       ふと、目の前の彼女に気が行くと、涙を流していた。


       「えっ。」


      思わず声がもれた。あわてて、彼女は顔を隠すと言った。


       「はやく、続きを書いて!」


      彼女は必死である。ボクは、止めていたコンテを動かすと、彼女のデッ

      サンに集中した。何故か、手が自分のものでないようにスラスラと動

      く。こんな想いは初めてだ。



                                       (つづく)

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        • 2016.04.04 Monday
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        • 21:00
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        コメント

        何故か、手が自分のものでないようにスラスラと動く

        神のデッサン、でしょうか
        不思議な体験ですね


        ありがとうございます
        • ponsun
        • 2013/04/29 4:45 AM
        絵に限らずなんでも難しいものですが、時として、実力以上のモノが出てくることもありますよね。
        相合傘・・・懐かしい文字ですねぇ。
        • 太郎ママ
        • 2013/04/29 7:55 AM
        PONSUNさん コメントありがとうございます♪

        いやぁ〜 なんだけ説明が難しくなってきましたね(笑)
        太郎ママさん コメントありがとうございます♪

        そうですね〜 何か内面から湧き出すものがあるのでしょうね☆
        こんばんは。

        あぁ、なんと不思議な世界に入ってしまったのでしょう。

        ますます想像が広がっていきます。
        現実のような夢のような・・・

        夏雪草さん コメントありがとうございます♪

        想像力を膨らませていただき、嬉しいですね〜
        次回も乞うご期待ください☆
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