スポンサーサイト

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    • 2016.04.04 Monday
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

    0

       

      第7話

       


       ぼくは、少しの間、彼女の後ろ姿を見つめていた。しかし、一

      度も彼女はこちらを振り向かない。当たり前だ。見知らぬ子が、

      ぼくを気にするわけがない。
      つくづく自分の単細胞を賛嘆してし

      まう。


       「そうだ。」


      実家に何も土産を買ってないのを思い出した。あわてて、構内に

      戻ると「みたげ売り場」を探した。いかにも、東京帰りというよ

      うな土産を買った。


       

       駅から実家までは、大人の足でも1時間ぐらい歩かなくてはい

      けない。バスは通ってない。タクシーは高すぎる。ぼくは、ひと

      り歩き出した。少しづつ道は、細くなり、途中から山あいに入っ

      ていった。山道を歩いていると、
      7年の時間の経過が嘘のよう

      で、何も変わってないようにさえ思えた。


       さあ、実家についたら、第一声はどうしよう?まずは、(ただ

      いま!)だろうか。あまり元気は出さない方がいいかも知れな

      い。母は、どうだろう?電話をくれたのだから、喜んでくれるだろ

      う。感動の対面で抱きついたりして・・・。


      それはないだろう。父はどうだ。喜ぶだろうか?怪我の具合がわ

      からないが、寝たきりなら、殴られるようなこともないだろう。

       


       そうこう思いを巡らしているうちに、峠の一番高いところまで

      着いた。ここから実家を見ることができる。おお、変わらぬ風景

      だ。ちょっと感動した。今回は、絵画の道具も持ってきた。ここ

      からの風景も書きたいひとつだ。よし、もうひと頑張りだ。ここ

      からは下りになるので、スピードが違う。一歩一歩、実家に近づ

      いていくのがわかる。ちょっと、緊張してきた。やはり
      7年は長

      い。


      心配もかけただろう。そうだ、素直に謝ろう。そして、もう一

      度、画家を目指していることを話すんだ。


       

       やっとの思いで、実家の前にたどり着いた。何だか、静まり返

      っている。恐る恐る玄関の前に立った。


       「たっ、ただいまっ!」


      思ったより元気な声になってしまった。中からは、何も応答がな

      い。今度は玄関の引き戸に手をかけながら、呼んでみた。


       「たぁ、だぁ、いまーっ!」


      ちょっと、おどけた感じになってしまった。懐かしい引き戸は、

      ガラガラと音を立てて空いた。キョロキョロとあたりを見渡し

      た。土間には誰もいないようだ。敷居をまたいだ。その瞬間だ。


       「わっ!」


      後ろから誰かが、飛びついた。


       「うわぁ〜」


      ぼくは土間に飛び込んだ。


       「あっはは、あっはは!」


      笑いの主は、母である。


       「な、なんだよ。」


      ちょっと不愉快だ。


       「やあ〜よく来た。よく来た。まあまあ遠慮せず、上がれ

        い。」


      母が大きく見えた。仕方なく、靴を脱ぐと広間へと向かった。

                           (つづく)

       

       

       ランキング 応援お願いします!

            
      人気ブログランキングへ
      にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                              にほんブログ村


      『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

      0

          

        第6話

         


         車窓から見える景色は、灰色の建物から少しづつ少しづつ、緑

        の木々に移り変わっていった。高校を卒業するとき、画家になる

        と言って家を飛び出した自分。何とか、大学に入学したものの、

        バイト、バイトに明け暮れる毎日。好きな絵も何が真実かわから

        ぬまま、卒業を迎えた。あれから
        7年、一度も実家には帰ってな

        い。いや、帰れない。こんな情けない自分を見せられない。頭の

        中は混乱したままだ。



         まだ時間はある、少し眠ろう。眠りほど人の心を安らかにする

        ものはない。ぼくは、いつの間にか、小学生の頃、苦労して歩い

        た山道にいた。周りもあの頃となんら変わらない。前を赤いラン

        ドセルの女の子が歩いている。そうだあの子だ。幼稚園の頃か

        ら、一緒に通った「あっちゃん」だ。ぼくは、あわてて追いつこ

        うと走った。走ったのに少しも前に進まない。「あっちゃん」は

        どんどん離れていく。


         「あっちゃーん!」


        叫んでも振り向いてもくれない。どんどんどんどん、「あっちゃ

        ん」が遠のいていく。「ああーっ!」と叫んだと同時に、窓に頭

        をぶつけた。目が覚めた。


         「ここは、どこだ?」


        焦ってあたりを見渡した。大丈夫、まだ、到着してない。目をこ

        すり、大きく手を伸ばし、あくびをした。


         「クククッ。」


        後ろから、笑いを噛み殺すような声が聞こえた。そっと、覗いて

        みると、見知らぬ顔だ。


         「ご、ごめんなさい。」


        口を手で押さえたまま、まだ笑いをこらえていた。髪の長い、よ

        く見ると可愛い子だ。しかし、気分的には面白くないので、知ら

        ん顔をして前を向いた。

         


         しばらくすると、駅に到着した。荷物を取ろうと網棚に手を伸

        ばすと、後ろの彼女も同じ行動をとっている。(ここで、降りる

        のか。)何だかドキドキしてくる。馬鹿だ、ぼくは、わざと知ら

        ない顔をした。


         ホームに降りると、はてさて、久しぶりなので降り口がわから

        ない。後ろの彼女は、さっさと歩いて行った。(まいいか、着い

        ていこう。)また、悪い癖だ。
        しかし不思議にもぼくの行きたい

        降り口と同じだった。(ラッキー!)あれ、子供じみてる。自分

        で、自分がわからない。



         改札口を出ると、さすがに同じ方向にはいかないだろうと見て

        いると、彼女は僕の行きたい方へと進んでいった。

         

                               (つづく)

         


         ランキング 応援お願いします!

              
        人気ブログランキングへ
        にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                にほんブログ村


        『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

        0

           

          5

           

           
           あれから1週間、ぼくの頭に中では、ある思いが行きつ、

          戻りつしている。

           
          オーナーの言葉だ。会社勤めになれば、もちろん収入は安

          定する。その代償に
          思うように絵は書けなくなるだろう。当

          たり前の話に悩むのだ。


           キャンバスに向かってもなにか落ち着かない。もうこんな

          生活とはお別れする
          か。そんな時、携帯が鳴った。普段めっ

          たに鳴らない携帯だ。

           
            「も、もしもし?」

           
            「あー、なおかい?」


            聞き覚えのある声に、着信を確認した。母だ。

           
            「ああ。」


            どうもそっけない。

           
            「なお、父さんがなぁ・・・。」


            よく聞き取れない。

           
            「父さんがどうしたん?」

            
            「父さん、高い木から落ちてん。」

           
            「木から落ちた?」

           
            「ああ。」

           
            「そんで、どうなん?」


            元気のない声だった。

           
            「父さん、足の骨折って、歩けんや。」

           
            「足だけや?」

           
            「いーや、あちこち傷だらけや。」

           
            ぼくも言葉に詰まった。

           
            「なお、ちっと、帰って来れんかの。」

            
            「・・・・・。」


            また、頭の中が廻りだした。

           
            「なお、ちっとでいいけん。帰ってくれんかのう。」

            
            「・・・・・。」


            まだ返事が出来ないでいる。

           
            「もう、父さんもおこっちやいないっし。」

            
            「そんなこと・・・。」


            まだ、心に引っかかるものがあった。

           
            「ああ、わかった・・・・・帰るよ。」


            押し出すように答えた。

           
            「そかい、よかった。よかった。父さんもよろぶ。」

           
            「今日は無理だけ、あす帰る。」

           
            「ああ、そっか。待っとるにな。」

           
            「ああ、じゃあ、切るよ。」

           
            「わかった。」


            ボタンを押した。何やってんだ。死んだわけでもあるまい

            し、何も帰る必要もないのに・・・。まあ、
          23日いたらい

            いんだ。どおってことない。

           

           
             次の日、オーナーに
          23日部屋を開けることを伝えた。も

            ちろん、猛にもだ。オーナーは、無理せずゆっくりしてくる

            ように言ってくれた。直也の頭は混乱していた。選択肢が増

            えたのだ。

           

                                  (つづく)

           
           ランキング 応援お願いします!

                
          人気ブログランキングへ
          にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                  にほんブログ村


          『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

          0

             

            4



               マンションに帰ると、いつものように屋上に上がった。案

            の定、今日は風が
            強くて作品は書けそうにない。ぼくは、遠

            くに見えるビルの並木を見るとも
            なしに眺めていた。

             

              (ああ、画家を目指して早3年、売り絵で何とか食いつない

            ではいるものの果たしてこのままでいいのだろうか?)


            また、いつもの問が頭をよぎる。田舎の父母には、家出同然

            のように出てき
            た手前、泣き言なんか、とても言えない。

             
            (まあ、何とかなるさ。)


            いつもの結論だ。そうこうしてるうちに体が冷えてきた。ぼ

            くは、そそくさ
            と部屋に戻った。ドアノブに手をかけた時

            だ。

             
            「なおやくん!」


            呼ぶ声がした。振り返るとマンションのオーナーだ。

             
            「ちょっと、話があるんだけど、時間いいかなぁ。」


            別段、これという用事もなかった。

             
            「ええ。」


            しかし、一体何だろう。オーナーの部屋に呼ばれることなど

            まずなかった。
            ぼくとオーナーの部屋は、同じ階の端と端。

            直ぐについた。


            「まあ、上がって。」


            そう言って、招き入れられた。猛はまだ学校から帰ってない

            ようだ。

             
            「さあ、そこに座って。」


            立派なソファだった。革の匂いがする。

             
            「いつも、タケシの相手をしてくれてありがとう。助かって

            るよ。何しろ母親が早くに亡くなったものだから、甘えん坊

            で。」

             
            「仕方ないですよ。ぼくだって、同じ立場なら、きっとそう

             ですから。」


            オーナーは、悪いけどと言いながら、タバコを吹かし出し

            た。しばらく沈黙
            が続いた。オーナーは何か言いづらそうだ

            った。

             
            「実はおりいって話というのは、君にうちの会社に来ないか

             ということなんだ。」


            遠慮がちに、ぼくを見ている。すぐには答えは出てこない。

             
            「私ももちろん、君が画家を目指しているのは知っている。

             しかし、それで飯を食っていけるのは、ほんのひと握りの

             人間だ。君も大学を卒業してかれこれ
            3年も過ぎている。

             そろそろ腰を落ち着けてはどうかと思うんだ。」


            ここまで言って、大きくけむを吹き出した。ぼくは、黙って

            いた。

             
            「まあ、すぐに答えといっても無理だろう。考えておいてく

             れないか。」

             
            「は、はい。」


            ぼくは、何故か無愛想な返事をしてしまった。こんなにいい

            話なんてめった
            にない。オーナーは、大手企業の役員だ。し

            かし、諦めきれない。今まで何
            度も自分自身にも問いかけて

            きた。両親にも反対された画家の道だ。

             

             
             そうこうしているうちに猛が帰ってきた。

             
            「ただいま!」


            元気のいい声だ。

             
            「あれっ?なおにい、何でいるの?」

             
            「お父さんが呼んだんだ。」

             
            「やったぁ!ラッキー遊んでもーらおっと。」


            猛は、カバンを放り出して直也の隣に座った。

             
            「おい、宿題はいいのか?」


            父は厳しい顔をした。

             
            「平気さぁ。」


            彼は聞く耳を持たない。

             
            「今日は、部活はないの?」


            ぼくが聞いた。

             
            「今日は顧問の先生が出張でいないんだ。これもラッキ

            ー!」


            調子に乗っている。

             
            「なおやくん、悪いが少し相手をしてやってくれないか。私

             はもう一度会社に戻らないといけないんだ。」

             
            「ええ、いいですよ。」


            ぼくは、快く返事をした。そしてそれが何か、自分の夢を

            捨ててしまうこと
            になるのではという、変な予感につながっ

            た。

             

                                   (つづく)

              ランキング 応援お願いします!
                  
            人気ブログランキングへ
            にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                    にほんブログ村


            『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

            0

               

              3

               


               画廊「帰郷」をでると、あと
              2枚の絵を持って、大手デパート

              に向かった。都会の道を歩いていると、どうも自分だけが時間の

              流れがゆっくりのような気がする。まあ、特に急ぐ必要もなく、

              成り行きに任せている。この大手デパートには、平日なのに驚く

              ほど人がいる。この人たちは、どこでどんな仕事をしているんだ

              ろうと、馬鹿なことを考えている。エレベーターに乗るのは苦手

              なのだが、6階まで歩く勇気もない。上りを待つ人だかりの最後

              尾についた。ほどなく、ヤツは来たが果たして全員乗れるのだろ

              うか?一人のおばちゃんが、早く早くと手招きをした。ぼくは、

              キャンバスを抱きしめて、突撃した。何とか扉はしまった。
              6

              のランプがついてない。


               「何階?」


              おばちゃんが聴いてくれた。


               「6階で。」


              ぼくは、ペコリとお辞儀をした。

               


              6階には、ここの事務所がある。ぼくは、いつものようにノック

              した。


               「どうぞ!」


              奥から女性の声がした。事務局長の洋子さんだ。


               「失礼します。」


              いつものようにドアを開けると、中へ入った。


               「ナオくん、ご苦労さま。」


              書類に目を通しながら、こちらを見てない。


               「あの、絵ができました。」


               「あ、そう。どれどれ、見せて?」


              彼女は手を止めると、彼のキャンバスを手にとった。


               「ねーえっ、これって前のとちょっと違うんじゃない。」


              あっさりといった。


               「ええ、少し変えてみたんですよ。」


               「ダメよーっ、変えちゃァー、この間のが一番売れたんだぁ」


              ぼくは頭を書いた。ブツブツ言いながら、もう1枚にも目をやっ

              た。


               「へーっ、これいいじゃん。今までにない感じ。私の好み

                よ。」


               「はぁ、そうですか。」


               「今度、これ、
              23枚書いてよ。」


               「わかりました。」


              もちろんこの人は、画家でもなんでもない。ただの商売人だ。


               

              ぼくは、事務所を出るといつものようにこのデパート内の画廊

              に行った。ここには、たくさんの「売り絵」が展示されている。

              何気なくそれらを見ていると、ひとりの女性から声をかけられ

              た。


               「あの、私、絵のことあまり詳しくないんですけど、会社の上

                司に社長室
              に飾る絵を頼まれたんですけど、選んでもらえま

                せんか?」


              突然の申し出に、ちょっと気が引けたがこれも何かの縁と思い、

              探してあげた。当然、自分の絵も掛けてある。だが、自分の絵は

              選ばない。気に入らないからだ。それよりも、無難な十人好きす

              るものにした。


               「どうですか、この花瓶の飾られた花の絵、明るくて、そ

              れでいて落ち着きもあると思いますよ。」


              ぼくは、いかにも評論家のような説明をした。

               
              「ありがとうございます。これに決めます。」


              素直な子だ。彼女は、深々と頭を下げると、売り場の従業員

              のところへ行った。

               

                                      (つづく)      

                ランキング 応援お願いします!
                    
              人気ブログランキングへ
              にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                      にほんブログ村


              『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

              0
                 
                 

                2

                 


                 ぼくにとって、レストランでの食事は至福の時であった。当

                然、自分ひとりで行くことはないし、行けるはずもない。華やか

                なひと時である。


                 この華やかな世界から、ぼくの部屋に戻るとあまりのギャップ

                を感じる。ただ、それは虚しさではなく、むしろ誇らしげにも思

                えた。ここが、自分の住む世界だ。居心地のいい最良の場所だ。

                さっき書きかけていた、キャンバスを机の上に立てかけた。しば

                らく見入っていると、想いは遠いふる里、田舎の景色が生々と蘇

                る。目を閉じた。


                 

                 いつの間にか寝入ったみたいだ。雀の戯れで目が覚めた。もう

                朝の
                8時を過ぎている。おもむろに起き上がると、手早く、歯磨

                き・洗顔を済ませた。冷蔵庫からコップ一杯の野菜ジュースを取

                り出すと、お腹に注ぎ込んだ。自慢じゃないが、自家製ジュース

                である。作業机の横に立てかけてある何枚かのキャンバスを取り

                出しては眺め、また取り出して
                5枚を選んだ。


                 

                 着替えを済ませたぼくは、まず契約を取り付けている画廊に向

                かった。ここは、見た目に古臭く、古美術商といった感じだ。そ

                れなのに定員の“みっちゃん”は若くて可愛い。


                 「おはようございます。」


                ぼくは、いつもの癖で恐る恐る引き戸をあけた。


                 「はーい!おはようーっ!」


                思いのほか元気なみっちゃんの声だ。


                 「いらっしゃい!」


                 「やあ。」


                あまりにそっけない。


                 「どう?いい絵が書けた?」


                彼女の顔が近づいてきた。

                あわてて、ぼくは紙袋の中から
                3枚の絵を出した。


                 「わあっー!すてきーっ!」


                みっちゃんは、その一枚を取ると高らかと掲げた。


                 「なおさんの絵、人気なのよ〜」


                 「あっ、ありがとう。」


                 「だってほら、先月もらった絵、もう一枚もないもの」


                彼女は、店内を見渡しながら、自慢げだった。


                 「お父さん、元気?」


                 「うん・・・。まだ寝てるけど、起こそうか?」


                 「いや、いいんだ。元気なら・・・。」


                店長は、東京でぼくに絵を教えてくれた先生だ。昨年、軽い脳梗

                塞で倒れている。それ以来、絵筆は握ってないようだ。


                 「じゃあ、行くよ。」


                ぼくが行こうとすると、彼女が言った。


                 「なおさん、初恋の人いる?」


                 「は、初恋?」


                思いもよらない質問に、ぼくの頭は混乱した。そして、その混乱

                に乗じて初恋の人の顔が、意外にも蘇ってきた。田舎の山道を歩

                く小学生。赤いランドセルの女の子。確かにそうだ。

                 

                                       (つづく) 

                 
                 ランキング 応援お願いします!

                      
                人気ブログランキングへ
                にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                        にほんブログ村


                『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

                0

                   

                  『 幻 愛 』(げんあい) 〜 詩小説 6 〜

                   

                   連載でお送りします。画家を目指す、小森直也(主人公)を

                  取り巻く人間模様を中心に、真実の愛の姿を表現してみたいと思

                  います。

                   それは、現実なのか、幻か、あなたの心に問いかけます。


                   

                  1

                   


                   コンクリートの天井に座って、いや正確には、屋上に座ってい

                  る。ぼくは折りたたみ椅子に腰掛けて、イーゼルに向かってい

                  る。さっきから、筆がなかなか進まない。もう今日はこの辺にし

                  ておこうかと思ったとき、後ろから呼び声がした。


                   「なおにいーっ!」


                  このマンションのオーナーの息子、猛である。ぼくは黙ってい

                  た。慌ただしい足音は、ぼくのすぐ前で止まった。


                   「やあ、なお兄(にい)。また書いてるんだ。」


                  彼は、キャンバスを覗き込んだ。しばらく沈黙がつづいている。


                   「ねえ、どうしていつも山の絵なの?ここから山なんてみえな     

                    いよね?」


                  ぼくは前にも説明したろって、思ったが優しく答えた。


                   「山が好きだからさ。目を閉じれば、ぼくには見えるんだ。」


                   「ふ〜ん。」


                  彼はつまらなそうに答えた。


                   「そうだ、父さんが今夜は外食にするって、なお兄も呼べっ

                    て。」


                   「そう、わかった。準備するよ。」


                  ぼくは機嫌よさそうに彼に笑顔を見せた。


                   「じゃぁ、下で待ってるよ。」


                  今度は慌ただしい足音が遠のいていく。


                  ぼくは、もう一度キャンバスに目をやった。これが自分の書きた

                  い絵だろうか。
                  答えは直ぐに帰ってくる。もちろん「ノー」だ。

                  ため息が出た。そそくさと片付けにかかった。もう日も落ちかけ

                  ている。夏にしては涼しかった。

                   


                   マンションの下では、猛が手招きをしてる。ぼくは、解ったと

                  いう表情をして小走りに表に出た。群青色のベンツが止まってい

                  る。彼は既に乗り込んでいた。


                   「お邪魔しま〜す。」


                  ドアを開けると、ぼくは後部座席に乗った。


                   「直也くん、悪いなぁ。急に誘って。」


                  オーナーの声は低音で渋い。


                   「とんでもないです。いつもすいません。」


                  ぼくは少しかしこまった。月に一度ぐらいは、外食に誘ってもら

                  っていた。オーナーが言うには、猛と仲良くしてもらってるから

                  だという。オーナーの奥さんは、ぼくがここにお世話になる前に

                  亡くなっている。猛は一人っ子で、中一にしては甘えん坊だ。


                   「どうだい、絵の方は売れてるかい?」


                  渋い声だ。


                   「ええ、まあボチボチと・・・。」


                  いい答えが思いつかなかった。芸大を出て、東京に出てきたもの

                  の、しがない売り絵作家である。売り絵作家というのは、スパー

                  やデパートで売ってるような油絵を描く作家のことだ。いかにも

                  十人ごのみする、良くもなく、悪くもない絵を書くのだ。もちろ

                  ん賃金も安い。それゆえ、いかに絵の具を少なく使いそれらしい

                  油絵にするのかがテクニックなのだ。


                   そうこうしているうちに、いかにも高級そうなレストランの前

                  に着いた。                  
                                         (つづく)

                   

                                                                     

                   ランキング 応援お願いします!

                        
                  人気ブログランキングへ
                  にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                          にほんブログ村


                  『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

                  0

                    24


                     一瞬、確かに時は止まった。ボクにはそう思えた。そしてそれは、

                    また、過去への誘いか。


                     「や、やめろーっ!」


                    思わず、ボクは叫んでいた。その声に驚いたのか、彼女は後ろへとた

                    じろいでいた。自分が取り乱しているのが解った。肩で何度か大きく

                    息をしたかが、落ち着かない。この時の顔を鏡で見たら、きっと自分

                    でも逃げ出しただろう。彼女は、その場に腰を落とした。その彼女の

                    元へと歩みを進めた。


                     「な、なんだって!し、死んだだって!」


                    なぜか、声をあらげている。ボクは、彼女の前に突っ立ってた。


                     「どうして、どうして ・・・・・・ 死んだんだ ・・・・・・ 

                     。」


                    それはもう、どうにもならないつぶやきのようだ。彼女も黙ってい

                    る。


                     しばらくの間、ふたりはその場を行き過ぎる風のなすがままになっ

                    ていた。


                     「な、直くん ・・・・・ 。」


                    彼女はつぶやくように声を出した。


                     「 ・・・・・・・・・・ 」


                    ボクは黙っていた。いや、何か身体の力が抜けていた。


                     「おねいちゃんは ・・・・・ おねいちゃんは、自殺したの 

                     ・・・・・。」


                    最後の言葉は、よく聞き取れなかった。いや、聞けなかった。ボクに

                    は次の言葉もない。


                    ただ、彼女の次の言葉を待つだけだ。それには時間はかからなかっ

                    た。


                     「おねいちゃんは、万博の開発には反対だったの 
                     ・・・・・・ 」

                     

                     「でも ・・・・・・ 万博に反対じゃない ・・・・・」

                     

                     「山を壊すのが ・・・・・・ 緑を壊すのが 

                     ・・・・・・・ 」

                     

                     「緑を壊すのが ・・・・・・ 許せなかったの 

                     ・・・・・・・ 」


                    彼女はそこまで話すと、遠くを見つめた。そして、みつめたその目を

                    ボクに向けるのだ。


                    その目はボクに訴えかけている。答えなくてはならない。


                     「ど、どうして ・・・・・ じ、自殺なんか ・・・・・・ 」


                    そう言って、しまったと思った。


                     「い、いや ・・・・・・ 」


                     「そうじゃないわ!生きられないのよ!」


                    彼女は叫んだ。絶叫だ!


                     「 ・・・・・・・・・ 」


                    ボクには声が出なかった。彼女は肩で息をしている。そしてそれは呼

                    吸を整えてるようにも見えた。ボクには待つしかなかった。時間はい

                    くらでもあるのに待つのが辛い。


                     「そ、そうよ ・・・・・・ おねいちゃんは ・・・・・・ 緑の

                     精なの ・・・・・・ 。」


                    その言葉を聞いて、ボクは唖然としてしまった。


                                                    (つづく)


                      ランキング 応援お願いします!
                          
                    人気ブログランキングへ
                    にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                            にほんブログ村


                    『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

                    0

                      23


                        ボクは全身に力を入れた。(よ、よし!立ち上がれるぞ。)


                       「だ、大丈夫?」


                      あっちゃんがボクに駆け寄ってきた。その勢いに負けて、23歩うし

                      ろへよろめいた。


                      彼女は、ボクの腕と肩をつかむと支えてくれた。それなのにボクは、

                      振りほどくように彼女のことを押しやった。


                       「どうしたの?」


                      彼女はけげんな顔をした。


                       「き、きみは、だ、誰なんだ。。。」


                      ボクは必死に声を出した。彼女は答えない。ボクは改めて、あたりを

                      見渡した。


                       (あ、あった、ボクのだ・・・・・。)


                      倒れてしまったイーゼルと画材を取ろうとした、その時だ!


                       「あ、あなたは、なにもみてないはわ!」


                      彼女が叫んだ。


                       「あ、あなたは、真実を見てない!」


                      彼女は続けた。


                       「あ、あなたが、東京のビルの上で書いていた絵は嘘だわ!何も見

                        てない!」


                      ボクには反論ができない。確かにそうだ。黙ったままのボクを彼女は

                      見つめた。少しの沈黙の後で、取り乱した自分を恥じるかのように彼

                      女は語りだした。


                       「ねえ、直くん。ここの景色、見てよ。私たちが遊んだ頃といっし

                        ょ?」


                      彼女は涙ぐんでるようにも見えた。言葉を選んでるのか、会話が途切

                      れた。確かに彼女の言う通り、ここは変わってしまった。いや、ここ

                      だけじゃない。開発という名のもとに自然が平然と壊されていた。


                       ボクはしゃがんで、散らばってしまった画材を集めた。それはま

                      た、現実から目をそらす愚かな行為の始まりにも思えた。彼女が、少

                      しづつボクに近寄ってくるのが解った。


                       「そう、あなたは、そう ・・・・・。いつもそうやって現実から

                        背をむけるの?」


                      彼女はつぶやくようにささやいた。もう、ボクの直ぐそばにいた。


                       「あ、あ、いや ・・・・・。」


                      そういうのが精一杯だった。


                       「あなたが、現実から目をそらし、東京へ行ってしまい 

                        ・・・・・。悲しかった ・・・・・。」


                      彼女の目から涙がこぼれた。


                       「ボ、ボクは ・・・・・。ボクは逃げたんじゃ ・・・・・ 逃

                        げたんじゃない。」


                      ボクは彼女の前に立ち上がった。次の瞬間、彼女の顔はボクの横にあ

                      った。彼女は倒れこむようにして、ボクにつかまった。





                       時よ、止まるものならば永遠に時間を止めて欲しい。心の中で何度

                      もそう願った。彼女はひとしきり泣くと徐々に冷静さを取り戻してい

                      った。ボクには、どうしても聞きたいことがあった。それは、あっち

                      ゃんのお姉さんの事だ。もう、のど元まで出てきている。しかし、そ

                      こから先が問題だ。彼女に自分が体験したことを話して、果たして信

                      じてもらえるだろうか。いちまつの不安はあるものの、意を決して言

                      葉にした。


                       「ね、ねえ、あっちゃん?」


                      ボクは言葉に困った。彼女はボクを見つめている。その眼差しが辛

                      い。


                       「あ、あの、あっちゃんのお姉ちゃんだけど ・・・・。」


                      彼女はうつむいた。


                       「み、みどりさんだよね?」


                       「 ・・・・・・・・・。」


                      返事はなかった。ボクには言葉が出ない。


                       (いいや、このままで ・・・・・。)


                      その時だ、彼女の口が開いた。


                       「お、おねいちゃんは ・・・・・・ し、しんだの 

                        ・・・・・・。」


                      ボクは耳を疑った。



                                          (つづく)




                        ランキング 応援お願いします!
                            
                      人気ブログランキングへ
                      にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                              にほんブログ村


                      『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

                      0

                        22




                          宇宙空間というのは、およそこのような場所をいうのだろうか。時

                        間の経過など、皆無に等しい。死後の世界といってもいいかも知れな

                        い。自分の体は、宙に浮いているのか。それとも、大自然の懐に収ま

                        り抱かれてるかのような、母の胎盤とつながり羊水の中を浮遊する子

                        のような安らかな気分になってきた。このまま、ずっとこうしていた

                        い。


                        そう願ったとたん、ボクの体は大地に叩きつけられるのではないかと

                        いうようなスピードで急降下していった。。。



                         「直くん、直くん、だいじょうぶ!」


                        誰かの呼ぶ声が耳元で聞こえる。( 一体、誰だ?ああ、頭が痛

                        い!)


                        閉じていた瞼を開けようとするが、あまりに眩しくて辺りがよく見え

                        ない。それでも、何回か閉じたり、開いたりしているうちに段々慣れ

                        てきた。


                         (み、見えるぞ、じょ、女性だ。。。)


                        でも体が思うように動かない。それよりも、何よりも声が出ないの

                        だ。


                         (か、彼女は、あ、あっちゃんだぁ〜!)


                        ということは、ここは何処だ。何とか、目を見開いて自分の体を見

                        た。大人に戻っている。


                         「あっ!よかった。気がついたのね!」


                        あっちやんが、嬉しそうにボクを見つめている。それも大人のあっち

                        ゃんだ!


                         「う ・・・・・ うん ・・・・・・。」


                        何とか、声を絞り出した。


                         「無理しなくてもいいのよ。これ飲んで!」


                        彼女は、ボクの頭を起こすと水筒の水を飲ませてくれた。それは、ま

                        るで造影剤のようにボクの体に染み渡った。



                         しばらくボクは、時間の流れるままにしておきたかった。というよ

                        りも、現状を受け入れるのに時間が必要だったと言ったほうがいいだ

                        ろう。あっちゃんもそれを望んでるかのように黙っていた。彼女は、

                        自分のハンカチを取り出すと水筒の水で濡らした。そして、


                        そのハンカチを絞るとボクの額に載せてくれた。


                         ( あっ!・・・・・・ )


                        ボクは飛び出しそうな声を飲み込んだ。そして、見てはいけないもの

                        を見たという後悔の念に駆られた。しかし、もう遅い。目に焼き付い

                        た光景は忘れがたい。


                         ( あ、あっちゃんの腕にも火傷の跡が ・・・・・・。 )


                        ボクは目眩がした!



                                                 (つづく)


                         ランキング 応援お願いします!

                              
                        人気ブログランキングへ
                        にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                                にほんブログ村


                        << | 2/3PAGES | >>

                        PR

                        calendar

                        S M T W T F S
                         123456
                        78910111213
                        14151617181920
                        21222324252627
                        28293031   
                        << May 2017 >>

                        ローカルテキスト

                         

                        見つけよう!Amazon

                        ドリームポケット

                        ゴールデンアイ

                        レインボーマップ

                        recent comment

                        recent trackback

                        profile

                        search this site.

                        mobile

                        qrcode

                        powered

                        無料ブログ作成サービス JUGEM