スポンサーサイト

0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    • 2016.04.04 Monday
    • -
    • -
    • -
    • by スポンサードリンク

    『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

    0

      21



       ボクの体は、宙に浮いたまま何処かへ弾き飛ばされた。周りの景色

      など解らない。もちろん、自分に意識があるかどうかさへ疑問だ。何

      がどうなって、何処へ飛んできたのか。意識が回復するのに、そんな

      には手間はかからなかった。


       ボクの目の前には、傷だらけになった”あのみどりさん”がいた。そ

      うだ、ボクも大人に戻ってる。あの部屋に戻ってきたんだ。部屋に突

      っ伏したまま、動かない彼女にボクは駆け寄った。


       「み、みどりさん、大丈夫!?」


      ボクは彼女を抱えあげようとした。


       「う、う、うん。」


      彼女が息を吹き返したようだ。彼女の目はうつろだった。ボクが見え

      てるのだろうか?


       「ね、ねえ ・・・・・ お、思い出した ・・・・・・。」


      とぎれとぎれの言葉の中で、ここだけがよく聞こえた。


       「な、何を?」


      咄嗟にボクの口からは、そんな言葉が出てしまった。彼女はまた、ボ

      クを睨んだ。


       「ど、どうして、どうして思い出せないの ・・・・・・。」


      彼女の声は、涙に濡れている。どうしたらいいのか分からぬまま、彼

      女を抱きしめた。


      目を閉じると、あの保育園児のボクがいる。あっちゃんもいる。そう

      だ、あの告白だ。


       「み、みどりさん、思い出したよ!」


      ボクは、彼女を抱きしめてる手を緩めようとした。しかし、彼女は自

      分の力で起きていることが出来ない。ボクは、彼女をそっと、その場

      に横たえた。


       「ボ、ボク行かなくっちゃ ・・・・・・。」


      つぶやくような声になった。


       「ダ、ダメ ・・・・・・。」


      彼女の口が動いた。ボクにはよく聞こえなかった。彼女の口元に耳を

      近づけた。


       「あ、あっちゃんと ・・・・・・ わ、わたしは ・・・・・・ 

        同じ ・・・・・・。」


      よく聞こえなかった。


       「み、みどりさん、しっかりして、だいじょうぶ?」


      ボクは彼女の頬に手を当てた。(冷たい ・・・・・・。)


       「な、なおくん ・・・・・ あ、あなただけ ・・・・・ 守れ

        るのは ・・・・・・。」


      絞り出すような彼女の声だ。


       「わ、わかった、待ってて、みどりさん、必ず助けに来るから!」

        
        

        それだけ言うと、ボクは立ち上がった。


       「 ・・・・・・ ま、まって ・・・・・・。」


      彼女の声は、届かなかった。ボクは、振り向きざまに玄関へと走っ

      た。何の躊躇もなく玄関の扉を開けると、ボクの体はまた異次元の世

      界へと放り出された。それは、まるでブラックホールに吸い込まれる

      小さな星のようだ。


       「た、たすけて〜!」


                            (つづく)

       
       ランキング 応援お願いします!

            
      人気ブログランキングへ
      にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                              にほんブログ村


      『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

      0

                    第20


         朝が来た。希望の朝だ。ボクは、いつものように目を覚ました。

        が、直ぐに子供のままの自分に気がついた。


         「なおちゃ〜ん!ご飯よ〜」


        隣の部屋から声が聞こえる。


         「はーい!」


        違和感もなく、返事をする自分がいる。起き上がると、パジャマのま

        ま、障子を開けた。


         「はい、はい!保育園に遅れるからね。」


        母は手早くボクを座らせると、自分も対になるように座った。


         「今日はねぇ、あっちゃんのお母さんが送ってくれるからね。」


        そうだった。母とあっちゃんのお母さんとで交代交代で保育園まで

        送ってくれてた。母は、チラチラと時計に目をやりながらボクをせか

        せた。さすがに、この頃のボクはのんびり屋さんのようだ。そういえ

        ば、大人になっても変わっていない。


         「おはようございます!」


        玄関から元気な声が聞こえてきた。


         「あれ、美代さんじゃないね?」


        母はボクに着替えなさいという手振りをすると、玄関へと出て行っ

        た。


         「あれ、みどりちゃん!どうしたの?」


        母の声が聞こえる。


         「あのぉ、お母さん調子が悪いので代わりに私が。。。」


        みどりちゃんの声だ。


         「なにーっ、電話くれたら、私が行くのに〜。」


        母は言った。


         「いいんです。学校に行く途中だし、用意も持ってきましたか

         ら。」

         
         

         「そおっ、ごめんね。悪るいなぁ〜」


        何やらやり取りをしている。あわててボクは着替えると、玄関に出

        た。そこには、あっちゃんと手をつなぐ、みどり姉ちゃんがいた。



         ふたりの後ろをトボトボ歩いていると、みどり姉ちゃんが振り返っ

        た。


         「さあ、なおくんおいで。」


        手を出している。ボクは迷わず、その手をつかんだ。


         「なおくん、昨日の話、聞いたよ。泣きながら帰ってきたんだっ  

         て。」

         

         「 ・・・・・・・・・。」


        ボクには声が出ない。みどり姉ちゃんは続けた。


         「あたしさぁ、聞いちゃったんだ・・・・。」


         「 ・・・・・・・・・。」


        何の話か見当もつかなかった。


         「あっちゃんが、なおくんに言った言葉・・・・・。」


         ボクはそっと、あっちゃんを見た。彼女はうつむいている。

         

         「お嫁さんにして欲しいって・・・・・。」

         
         

         「 ・・・・・・・・・。」


        声が出ない。みどり姉ちゃんの足が止まった。睨むような目でボクを

        見ている。


         ( あれ?あっちゃんがいない!)


        みどり姉ちゃんの手を握る力が、みるみるうちに強まった。


         「あーっ!い、痛いーっ!!」


        ボクの体は宙に浮いた。


                             (つづく)


         ランキング 応援お願いします!
              
        人気ブログランキングへ
        にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                にほんブログ村


        『 幻 愛 』 〜 詩小説 6 〜

        0

           

          19



           ああ、これは夢なのか。はたまた、現実なのか。もしも、過去に戻れ

          るとしたらこの事は現実に違いない。ボクは、あっちゃんの問いに答え

          られないでいた。


           「いつまで遊んでるの!もう日が暮れるわよ。」


          お姉ちゃんが上がってきた。ボクは保育園のボクなのに何故か、お姉

          ちゃんの姿が印象的だった。


           「なおくん、早く帰りなさい。」


          言われるままに、先にその場を立ち去った。お姉ちゃんがあっちゃん

          に何か言ってるのが聞こえたが、良くわからなかった。それよりも何よ

          りも、これから一人でこの夕暮れの中で、家まで帰らななければならな

          い。途中には「歯黒べったり」の出る社もある。



           ボクは半ば目をつむったまま、ひたすら走った。両側を山の木々が

          覆い、なおさら暗さを増してきた。(もうすぐ、例の社の近くだ!)そう思

          うだけで、心臓が破裂しそうだ。


          スリッパを履いていたボクは、足がもつれてその場に突っ伏した。


           「うーっ、いたたたぁ。」


          膝がすりむけたようだ。でも、暗くて見えない。飛んでいったスリッパも

          ひとつしか見つけられない。自然と涙が出てきた。



           その時だ、風が吹いたのか、誰かの声が聞こえてきた。


          「ひっゆっ、ひっゆっ、ひっゆっ、ひっゆう〜。」


          ボクは、取るものもとりあえず、大声を上げて走り出した。走って、走っ

          て、走りぬいた。


          裸足である。全然、気づかない。



           どれぐらい走ったかなんて、覚えてない。大人の自分であれば、「一

          目散」という言葉を使っただろう。とにかく家にたどり着くまで走った。

          家の明かりが見えてくると、不思議なものだ。さらに、足の速さが増し

          てくる。ちょうど玄関の扉が空いて、母の姿が見えた。


          迷うことなく、ボクは母の胸に飛び込んだ。顔は涙でぐしゃぐしゃであ

          る。


           「はい、はい。よし、よし。こわかったね。あれまぁ、裸足になって。ほ

           れほれ、こっちへおいで、足を洗ってあげるよ。」


          母は優しかった。これほど、母が恋しいと思ったこともなかった。次第

          に涙も枯れたのか、頬も乾いてきた。


           「さあ、さあ、こっちへおいで。足を拭いてあげるよ。」


          母はボクの足の裏を見て言った。


           「よう、血がでーへんかったなぁ。」


          そう言って、笑った。ボクも何か誇らしい思いになった。


           「よしゃ、家に上がって、夕飯にしよか。」


          この時ほど、母が頼れる人だと思ったことは子供心になかったに違い

          ない。



                                            (つづく)

           
           ランキング 応援お願いします!

                
          人気ブログランキングへ
          にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ
                                                  にほんブログ村


          << | 3/3PAGES |

          PR

          calendar

          S M T W T F S
             1234
          567891011
          12131415161718
          19202122232425
          2627282930  
          << November 2017 >>

          ローカルテキスト

           

          見つけよう!Amazon

          ドリームポケット

          ゴールデンアイ

          レインボーマップ

          recent comment

          recent trackback

          profile

          search this site.

          mobile

          qrcode

          powered

          無料ブログ作成サービス JUGEM